玖美子(くみこ)は、いつものチャットから退出した。
若いっていいな。――玖美子は思う。
若い子と話していると、好きな彼のことで一喜一憂してる、そのワクワク感が伝わってきた。
玖美子にもそんな時代が確かにあった。
学生時代、無我夢中で意中の人になんとか想いを伝えた。
玖美子の人生で最も愛した人。
彼は卒業しても、ずっと一緒だと指輪をくれた。
その夫は今。
隣のリビングでTVゲームに興じている。
「ふおっ? やべっ! 死ぬ!」
彼が最近、ハマっているアクションもののゲームだ。
玖美子は軽く溜息を付く。
彼女は時計を見る。もう深夜だ。
強く目を閉じて、伸びをする。
「ん……」
明日は日曜だからと油断した。少し遅過ぎる。
玖美子はパソコンの電源を落とすと、自室を出た。
ふわりとした柔らかそうな肩までの髪がなびく。
少し歩いて、彼のいるソファの横に立った。
身長は低く、色白で年齢を感じさせない可愛いらしさを持っている。
スタイルも身長に見合って、凹凸は少なく少女のようだ。
シンプルなベージュのパーカーにデニム地のスカートを着込んでいる。
澄んだ切れ長の目がソファの彼を見下ろした。
顔は可愛いが表情は乏しい。おかげで怒っているように見える。
しかし、そうではない。
それは彼女のトラウマから来ている。
あまりに厳しい父親のもとで育ったためだ。
それは横暴で自分勝手で、家庭内暴力に近かった。
おかげで、ろくに他人ともしゃべれなくなり、表情は硬くなってしまった。
だが、そんな父親が死に、やっと彼女は解放された。
その時に、それまでずっと優しく接していてくれた彼に告白したのだ。
「……おやすみなさい」
やや高いがそれでも静かな声がその艶やかな唇から発せられた。
彼は玖美子を見ることなく、コントローラを操作している。
「ん、あ、おやすみ。っと! マジか!」
彼は画面のキャラクターを必死で動かし続けた。
玖美子の心には、さざ波が立った。
――いつものこと。
だけど。
恋人から妻になって、もう六年。
義母さんや実母に孫の顔を見せろとせがまれる。
だけど。
彼は玖美子を求めない。
だからといって、浮気をしているようなそぶりはない。
そもそも、昔からそうだったのだ。
それでも恋人同士の頃は、月に一回は彼が玖美子を求めた。
しかし、結婚してからはそれさえ激減した。
最後のセックスから、もう二年が経過しようとしている。
玖美子は我慢の限界に来ていた。
決して彼が玖美子を愛していなくなったわけではない。
なぜなら彼は、玖美子に対してセックスはしなくても、頻繁にキスや抱擁はしているからだ。
――だったら。
「ん? どうした、玖美子。寝るんじゃないのか」
夫は画面から目を離さず、問い掛けた。
「……うん」
玖美子は相変わらず、彼を無表情で見下ろす。
――求められないのなら、求めるしかない。
「敏明さん」
「ん? あっ、マジか、うわあ!」
画面のキャラに感情移入して、叫ぶ夫。
玖美子はふいに敏明の前に回る。
その手からコントローラーをむしり取った。
「な、なにすんだ、返せよ!」
敏明は玖美子を見上げて抗議する。
だが玖美子はそれを無視して、無言で彼の唇を奪った。
「ん……んむ……ちゅ……」
TV画面からゲームオーバーの音声が聞こえた。
玖美子はコントローラーを投げ捨てる。
床に当たって鈍い音がした。
彼が驚いて、唇を離そうとする。
「んん? んーんー!」
だが、玖美子はそれを許さない。
執拗に彼の口腔内を舐める。
「んふ……ぴちゅ……」
徐々に彼の口もそれに応じて開かれる。
アゴが大きく動き、一つの空間になった二人の口の中で、その舌が激しく絡み合う。
「ん、ん……」
ねっとりと濡れた口唇が滑り、位置を変え、また求める。
「ふぅっ……ふぅん……んちゅぷ」
玖美子の手が彼の頬を撫でる。髪を梳く。
「んを……」
玖美子はゆっくりと艶めかしい動作で頭を離した。
突き出したままの舌先から、唾液の橋が光る。
その舌を口の中に納めてすぐに、舌舐めずりをする。
肩で息をしながら、彼の目を覗き込んだ。
その眼は潤み、頬は桜色に染まっている。
かすれる声で敏明の耳元に囁く。
「……セックスしたい、の」
淫獣。
彼女はその時、一匹の牝と化していた。
彼の返事も聞かず、その股間に跨る。
玖美子は彼の身体を抱きしめた。
「ああ……敏明、熱い……」
彼女の開かれた膝の間、大事な部分の下に、ちょうど彼のモノがある。
それは熱を持ち始めているとは言え、まだ完全な状態ではなかった。
彼女は上半身を少し離すと、彼のトレーナーの裾から手を突っ込んだ。
乳首を人差し指と中指で挟むように、くりくりといじる。
「うぁっ!」
彼の上げた声を聞いた玖美子の心に、変化があった。
「……かわいい声……もっと聞かせて」
それはまるで小学生男子が好きな女子をいじめてしまうような、自分を見て欲しい、自分を意識して欲しいという幼稚な願望と酷似していた。
彼女は彼の乳首を挟む指を、ひねって刺激を与える。
「うっ、うう……!」
玖美子は薄く笑った。
「興奮……してるのね……おちんちん、大きく、なったよ」
敏明は息を飲んだ。
彼のトレーナーをまくり上げる玖美子。
ほどよく肉の付いた彼の上半身。
その起った乳首に吸い付く。
「ふあっ! あっ!」
彼が玖美子の頭を押さえた。
「んちゅ、れろ……」
「う、うう、はぅっ!」
「んふ、どんどん硬くなってるよ、敏明」
彼の頬が紅潮した。
玖美子は腰を彼の股間に押しつける。
「ね、挿れたい? 言ってみて……」
ぐりぐりと腰を動かす。
「ほら、どうしたの、言えないの?」
彼は切ない顔になっていく。
玖美子は気付いた。
その今まで見たことのない夫の表情に興奮している自分自身。
そして、そういうやり方が彼をも興奮させていることを。
玖美子は、強く命令した。
「言いなさい!」
彼は泣きそうに答えた。
「い、挿れたいです……玖美子さん」
玖美子はその言葉だけで、達しそうになる。
「はぁっ、はぁっ……良い子ね。じゃあご褒美……」
彼女は膝で立つと、彼の下半身を露出させた。
その雄々しい屹立に手を添えて、自分のパンツを横にずらした。
「いい? 挿れるよ……。良く見てて……」
玖美子は徐々に腰を落とす。
陰茎の先が彼女の敏感な部分を擦り、埋没していく。
「ん、んあああっ……!」
「うあっはっ!」
びゅくっ、びゅっ!
彼のモノが激しく脈打った。
「う、嘘、で、出てる? もう出ちゃったの?」
玖美子が驚いて接合部を見ると、白濁液が溢れてきていた。
彼が目を背けて、力無く謝った。
「ご、ごめん……」
その瞬間、玖美子の中でなにかが弾けた。
「この……ッ! ダメちんぽッ! もっと頑張りなさい!」
彼女は腰を前後に振る。
「んん、ん、ん! ほら、ダメちんぽ! もっと!」
精液の混じる愛液が垂れ流されていく。
彼はまた、泣きそうな声を上げた。
「そ、そんな、ああっ!」
今、出したばかりのペニスに過剰な刺激が与えられる。
だが、それは彼にとって快感だった。
すぐに硬度も大きさも復活する。
「ん、あ、いい、気持ちいい! ダメちんぽのくせに!」
ぐちゅ、べち、ばつ……。
「はぁっ、はぁっ! つ、突いて、突き上げるの!」
彼の腰が言われるままに上下する。
「ふあん! っそ、そう、いい! きもちいッ! あぅ!」
玖美子は彼の頭を抱くとさらに命令する。
「わ、わたしのおっぱい、吸いなさい! 早く!」
「は、はい」
彼女はパーカーの前にあるジッパーを一気に下げる。
すると、決して大きくはない玖美子の胸が露わになった。
ノーブラだった。
彼はその膨らみに、むしゃぶりつく。
「ふぅあッ! 噛んで! 噛むの!」
敏明は玖美子の乳首を甘噛みした。
「んくぅ! あ、はっ、はぅ! い、いひい!」
玖美子の腰の回転が上がった。
うっすらと汗をかいている。
アゴが上がる。
「あふぅ、ふぅ、あ……ッ……んぐ」
部屋に響くセックスの水音。
玖美子はだらしなく口を開けて、うわごとのように叫ぶ。
「お、奥に、奥に来てるぅ! 敏明のちんぽ、奥にぃ!」
敏明はその声にさらに興奮したのか、力強く彼女を抱きしめる。
「はぁはぁっ、お、俺、また……!」
玖美子の身体は、ふるふるとわななく。
「ん、ん! い、ひいよ、出して! いっぱい! 奥にぃ!」
二人の喘ぎと吐息がだんだん激しく強くなる。
「あ、ああっ、で、出る出る出る……っ」
「ん、ん、あぅっ! っあ、ああっ、い、いく、いくぅ」
お互いが強く抱きしめ合う。
「うぁぁっ!」
「んぁっぁあっ!」
どくんッ!
びゅ、びゅっ!
敏明の精液が、玖美子の子宮奥深くに注ぎ込まれていく。
玖美子はびくびくと痙攣しながら、淫らな言葉を口にした。
「……で、出てるぅ……中出しで、い、イっちゃった……」
まだ、敏明の射精は止まらない。
「ま、まだ……? もう、お腹いっぱいぃ……こ、これ、絶対、妊娠しちゃうよぉ……」
それから、しばらくはまるで獣のようにセックスをしまくった。
お互いの枷が外れて、本性をぶつけ合えるようになったからだ。
半年後。
大きくせり出したお腹を撫でる玖美子がいた。
「……良い子になってね」
敏明は笑う。
「いや、良い子に育てるんだ」
玖美子はコックリと頷いて、彼の胸に頭を預けた。
《end》
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