SHINOBI-COOL!! 弐

[弐之巻]


[壱之巻]へ
[参之巻]へ
SHINOBI-COOL!!トップに戻る
topに戻る

 そんなこんなで昼休みの屋上。
 昨日と違って、いつものようにカップルが等間隔で並んで座っている。
 上級生も下級生も、聞いてるほうが恥ずかしくなるようなやりとりを繰り広げている。
 それを横目で見ながら、つまり現実逃避しながら……
 ため息を吐いて、目の前の現実を見つめる努力をした。

 手元に華とクーがそれぞれ持ってきた、俺用の弁当が2つ。
 どちらも本家にあった重箱だ。
 目線を上げると、離れたところで、対峙している彼女たち。
「おーい。あのさー、先、食べててもいいかな?」
 ふたりは同時に俺のほうを向いて、感想が聞きたいから、まだ食べないでくれ、と言う。
 俺、腹減ってるんだけどなぁ。
 そんな俺を放っておいて、クーが華に向き直って、問う。
「華……お前が主(あるじ)に刃(やいば)を向けるなど普段ならばあり得ない。若の事……本当に演技なのか?」
 ん?どういうことだ?
「あは。空ちゃんには、隠し事できないなぁ……」
 少し、はにかんでから、クーの目をしっかり見て真顔で告げた。
「わたし、真剣に若サマ……いえ、信人君が好きなの」
 ぶほッ!
 ななななんだってー?!
「やはりな……わたしもだ」
 ええええー?!
 朝の告白は、マジだったのかよ!!
「うん、空ちゃんは、思ったことを素直に言う人だもんね」
「わたしは、華が羨ましかった。若のお側付きの護衛任務が。だから、前の仕事が終わり次第、わたしも若にお仕えできるよう、お館様に直訴していたのだ」
「信綱様にわざわざ……そう、だったんだ。じゃあ、もう、やるしかないね……」
「そうだな。今日は、昨日のように演技ではない……本気で参るぞ」
「もちろん、あたしもそのつもり」
 スッと、腰を落とすふたり。
 お互い、自分のスカートのすそのあたり、ふとももに手をやる。
 彼女たちはいつも、そこに武器を隠し持っている。
 棒手裏剣や、そう、クナイも持っている。
 昨日、クーがスカートの下から出したのはこれだ。

 ちなみにクナイとは、刃渡り十五センチほどで横幅の広い、後ろに輪の付いた両刃の刃物である。
 忍者の基本装備だそうで、これにちなんで、苦無衆の名は付けられている。
 そのままスコップのように使ったり、後ろの輪にひもを通して投げ、遠くの物を回収したりする。
 またロッククライミングの足場のようにも使える。

 って、解説してる場合じゃない。
 これなに? 俺を賭けた決闘?!
「華! 行くぞッ!」
「空ちゃん、勝負!!」
 そう言うと、2人は消えた。
 次の瞬間、短く小さい金属音が断続的に聞こえた。
 空中で火花が散る。
 そのたびに屋上を覆うフェンスが破れ、コンクリートの床が削れ飛ぶ。
 屋上にいるカップル達は、気付かない。
 もともと他人のことなんか見ちゃいないが。
 これが苦無衆の本気か……俺は戦慄を覚える。

 しばらくすると、どういうわけかカップル達は、お互いが合図をしたようすもないのに、一組、また一組と屋上から出て行った。
 そして、俺とたぶん、クーと華以外、誰もいなくなった。
 どうなってるんだろ。まだ、昼休みの時間はかなり残ってるしなぁ。
 いぶかしがっていると、ぶらっとリンダ姫が現れた。
 手を白衣のポケットに突っ込んで。
「結界だ」
「は? なんのことです?」
「結界を張ったんだ。解るか?」
「解りません」
「そうか。まあ、いずれ解ることだ……しかし、若いというのは、良いのう」
ちらっと空中に目をやった。
「……どういうことですか?」
 この人は、あのふたりが見えているのか?
 リンダ姫は、それには答えずに、猫が目を細めるように笑ってポケットから手を出す。そこにはカードの束を持っていた。
 それは妙な模様が描かれたトランプのようなものだった。
「さて、一仕事しようか」
 そう言うと、そのカードの束を、バッと無造作に空中に放り投げる。
 カードはパラパラと舞い落ち始めたが、すぐに異変が起きた。
 カードは一枚ずつ、小鳥のような形に変わってそのあたりを旋回し始めた。
「なんですか、これ?!」
 驚いてリンダ姫に問う。
「式(しき)。まあ、特にこれは苦無衆で開発した物だから、苦無式だな。ちょっとダジャレが効いて良いであろう?」
「ちょっと待ってください。今、苦無衆って言いました?」
「おお、そうであった。武田……いや、 若殿。改めて自己紹介しようぞ」
 こほん、とわざとらしい咳をして、続けた。
「私は苦無衆では“踏鞴の姫(たたらのひめ)”と呼ばれていた。今は引退して、実行部開発課の外部支援者だ」
 やられた。
 リンダ姫までとは、思わなかった。
「はぁ……さいですか」
「うむ、よろしゅうな。さあ、私の可愛い小鳥たちよ。行って参れ」
 号令と共に、ザーッと小鳥たちが散りながら、空中に解けるように消えていく。
 それを見届けて、リンダ姫はポケットから今度は携帯を出し、なにやら操作する。
「……休み時間に職員室で、“若殿が屋上で、クラスの女子生徒と会う”という情報を流しておいたのだが……」
「はい?! なんでそんなこと……」
「お、ビンゴだ。やはり、網に掛かったか。行くぞ、四階の男子トイレだ」
「え、華とクーは? 俺のメシは? って、わぁぁぁッ!!」
 リンダ姫は俺の腕を引っ張り、強引に屋上から連れ出す。
 なんなんだよ、もう!!


[壱之巻]へ
[参之巻]へ
SHINOBI-COOL!!トップに戻る
topに戻る



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送