[智子の告白 3]

プロミスド・シンボル


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 オレンジ。
 世界は燃えるようなオレンジ色に染まっている。
 潮騒さえも、その夕暮れ色に彩られていた。
「ん……」
 どうやら、わたしはウトウトしてしまったようだ。
 彼の腕から、ゆっくりと起き上がった。
 彼はまだ眠っている。
 さすがに裸で寝ると少し寒い。
 ふいに。
「はぷしゅ!」
 くしゃみが出た。
 その音で彼が目を覚ます。
「ん……ああ、大丈夫?」
 彼もゆっくり起き上がると。
「うわくしゅん!」
 くしゃみをした。
 わたしは思わず、微笑んでしまう。
「ホンマ、あたしら似たモン同士やわ」
 立ち上がって彼に手を差し伸べた。
「そろそろ……大阪、戻ろか」

 服を着て、車に乗り込んだ。
 彼は免許を持っていないので、帰りもわたしが運転した。

 高速道路上の空は、赤に近い橙色から藍色に移り変わっていく。
 BGMにはわたしのクラシックCDが掛かっていた。
 窓の外をぼんやり眺めていた彼が、何かに気付いたようにわたしのほうを見た。
「ん。なんか聞いた事あるな」
「そやろな。この曲はショパンのノクターン二番変ホ長調言うんやけど、ようテレビでも掛かるしな」
 彼は少し笑った。
「いや……智姉(ともねえ)と聞いた事がある」
 わたしは大きく頷いた。
「ああ。そか、そうやったね」

 あの頃……お互い、まだ“好き”と言う感情がよく解らないまま過ごしていた頃。
 彼はわたしの趣味を理解したかったのだろう。
 よく、わたしと一緒にクラシックを聴きたがった。
 だが、いつも彼はすぐ眠ってしまった。
 わたしは何度見てもその寝顔が可愛くて、幾度も頬にキスをした。
 いつもドキドキしていた。
 今も、やっぱりドキドキする。
 これが“好き”と言う感情だと解ったのはあれから、どのくらい経ってからだろう。

「まぁくん、ホンマは全然興味あらへんかったのに、無理して一緒に聞いてたんよね」
「バレてたか……。さすが智姉だな」
 お互い、微笑み合う。
 軽やかで優しいピアノが、わたしたちを包む。
「なんとなくだけど……この曲、智姉に似合う気がする」
 わたしは胸が高鳴った。
「そんなん言われたん、初めてやわ。嬉しいな」
 そう。似たような事自体は昔、付き合っていた人に言われた事がある。
 だが、その時は同じショパンでもピアノソナタ二番第三楽章……つまり、『葬送行進曲』だと言われたのだ。
 あれはあれで、とても良い曲なのだけれど……やはり、少しショックだった。
 あの人とは趣味が合ったな……でも、そんなふうにデリカシーに欠けたところがあった。
 キスを許したと言う事は、ちょっとは好きだったのかも知れない。

 ハッとした。
 今、わたしは自分自身が許せない事を考えてしまった。
 車を道路の端に寄せ、ハザードランプを点ける。
 彼は怪訝な顔をする。
「どうしたの?」
 わたしはハンドルを強く握り込んだ。
「ごめん……あたし……」
 涙が眼鏡に溜まって、ハンドルに落ちた。
「今、まぁくんを……前の人と比べてもたんよ……」
 彼は棒読みで反応した。
「うあーしょっくー」
 全くショックを受けていなさそうに笑う。
「そんなの、全然大丈夫だよ。俺は智姉の全部が好きなんだから。俺の知らない過去も全部ね」
 彼がわたしの涙が流れる頬に、そっと唇を付けた。
「だって、それが今の智姉だもん」
 大きな鼓動がわたしの中で響いた。

 ああ。
 なぜ、彼はいつも。
 わたしの欲しい言葉を与えてくれるのだろう。

 紅潮してくるのが解る。
 そして……下半身が疼く。
 わたしは顔を上げた。
「まぁくん……大好きや」
 彼の口唇にわたしの唇を重ねる。
「ん、んん……」
 深い口付け。
 舌を絡め合い、歯をくすぐる。
 ゆっくり離れると、唾液の銀糸が輝く。
「はぁ……続きは、お城でしよ」
 わたしは、すっかり紺色になった空の下に浮かび上がる“お城”を指さした。
 彼は、おどけて応える。
「御意にございます。我が姫」
 わたしもちょっとノって。
「うむ。では参るぞ」
 車をスタートさせた。
 それじゃ王様だよ、と彼にツッコまれながら。

 大人の“お城”に着いた。
 彼は素早く降りると、わたしのほうのドアを開けた。
「お手をどうぞ」
 わたしは彼に腕を伸ばす。彼はその指を取り、手の甲にキスをする。
「嬉しいけど、いつまでやるのん? それ」
 思わず、冷静にツッコミを入れてしまう。
 しかし、彼は真剣にわたしの瞳を見つめて囁いた。
「永遠に」
 わたしは息を飲む。
 ドキドキする。
 動揺してる。
 ひと言だけ彼に告げた。
「アホ」

 二人で相談して、マリンブルーで統一された部屋を選んだ。
 中に入ると案外、綺麗で広かった。
 部屋は二つあって、手前はソファと小さなテーブルがある。ちょうどカラオケボックスみたいな感じだ。
 洗面所やトイレ、バスへの出入り口もある。
 奥の部屋には、大きなTVとゲーム機、そしてその正面にキングサイズベッドがある。
「へー、けっこう清潔な感じだなぁ」
 彼が物珍しそうに、見て回る。わたしも初めて来たので、少し気分が高揚していた。
「ホンマやね。こんなんなんや」
 彼が急にベッドにダイブした。
「うおー、デカイなー! ウチにもこんなの欲しいよ」
「子供か、アンタは」
 微笑みながら、そばに座る。

 しばしの沈黙。
 ふと彼を見ると、お互いの目が合う。
 彼がつぶやく。
「なんか……こゆトコって“今すぐヤれ!”みたいな感じがして、恥ずかしいな」
 わたしは同意した。
「そやな……」
 しかし、彼と過ごせる時間は短い。
 わたしは立ち上がった。
「でもせっかく来たんやし。まずは一緒にお風呂、入ろ。昔みたいに」
「ん。そうするか」

 家庭用と違う、長さがある浴槽に、勢いよくお湯を溜める。
 その間にわたしたちは服を脱いだ。
「あれ? 智姉、眼鏡……」
 わたしは、小首をかしげて微笑む。
「アンタの顔、見ときたいから取らへんの」
 眼鏡には良くないのだが、仕方ない。

 お互い、一応、タオルで前を隠して浴室に入る。
 まだ、お湯は溜まり切ってはいない。
 彼は湯船の縁にあった、泡風呂の素を手に取った。
「お、これ面白そうだな。入れてみよう」
 パックを破り、それを投入した。
「おおー」
 見る見る泡が湧き上がった。
「楽しいなー、智姉」
 その無邪気な笑顔は、昔と変わっていない。
 わたしは、本当にこの人が好きなんだ、と思う。
 彼を抱きしめて、唇を重ねた。
 彼のしっかりとした男の身体が、腕が、わたしを抱き留めた。
「ん……はぁ」
 キスをしながら、まだ大きくなっていない彼のペニスを、そっと握った。
「うう……」
 彼の吐息が漏れる。
 軽く擦ると、その大きさと硬さは一気に膨れあがった。
「反応、速いなぁ。まぁくん……ちょっと前にしたばっかりやのに」
 彼はちょっと拗ねる口調で応える。
「だから……智姉がエロ過ぎるんだって……」
 わたしは、睨め付けるように彼の瞳を覗き込む。
「アンタのせいやもん」
 彼自身を擦る手を早めた。
「ふっ……っ」
 喘ぐ彼。
 わたしは彼の身体を舐めながら身体を屈める。
 乳首を軽く吸った。
「うあっ!」
 彼が魚のように跳ねる。
 わたしは、そのまま身体を移動させて、腹筋を舐める。
 膝立ちになると、彼のモノを頬張った。
「あぅ……きもちいいよ」
 まだ、微かにゴムと精液の匂いが残っている。
「ん! ん! んん!」
 リズミカルに手と口を使って、彼に奉仕した。
 その硬く滑らかな肉棒は口の中で、また大きさを増した。
「ふゅごい、ん、熱い、ん! ん!」
 彼の指がわたしの髪に絡みつく。
「ああ、はぁっ! と智姉ぇ……」
 彼はわたしの口に犯され、興奮している。
 それがどんどん、わたしの下半身をとろけさせる。

 ふいに、電子的なメロディが流れた。
 お風呂が沸いたようだ。
 わたしは口を離すと、それを握ったまま立ち上がった。
「中でしよか」
 彼は息が荒い。
 赤い顔で頷くと、浴槽へ一緒に入った。

 お湯は泡風呂の素のせいで、ぬるぬるしている。
 わたしは彼に背を向けて、後ろから抱き寄せられるように入っていた。
 ちょうど、わたしのアソコの下に彼のペニスがある。
 彼はわたしの脇の下から、胸を包み込むように抱きしめる。
「気持いいね……」
 性的なものではない、肌の触れ合う気持ちよさがある。
「うん……あったかいしなぁ」
 彼はわたしの耳を軽く噛んだ。
「ひうっ!」
 ビックリして声を上げてしまった。
 彼は少し笑って。
 呪文を囁いた。
「智子……愛してる」
 その言葉のせいで。
 わたしを繋いでいた理性の鎖が切れる。
「昌宏ぉ……して……むちゃむちゃにしてぇ!」
 わたしは我慢できなかった。
 腰を上げると自ら、彼のペニスをヴァギナに挿入した。
「はぁぁぁっ! ええわぁ、めっちゃええ!」
 彼のモノは本当に馴染む。まるで、ひとつだったみたいに。
 わたしは快楽を求めて、腰を振った。
 ちゃぷちゃぷと、水音が立つ。
 眼鏡が白く曇る。
「ああっ、と、智子! きもちいいよ、あ、はぁっはぁっ」
 彼もそれに合わせて、突き上げて来る。
「うあっ! ああっ、あああ! 入ってるぅ、硬いのん、硬いのん好きぃ!」
 彼がわたしの胸を、揉みしだく。
「ああ、智子のおっぱい、柔らかくて、ずっと触ってたい、よ」
 乳首がじんじんしてくる。
「あっ、先っぽ、先っぽいろてぇ!」
 彼の指が硬くなっている乳首をねじった。
「ひゅぅん!」
 痛みと快感が同時に襲ってくる。
 わたしのアソコが意図せずに、きゅっと絞まった。
「あっ! と、智子の中、今、凄く絞まった、よ」
「は、恥ずかしいからぁ、い、言わんとい、てぇ……あ、あっ、ああ!」
 だんだんと思考が停止し始める。
「智子のおま●こ、凄くいい! 凄く絞まるよっ!」
 彼は意地悪な言葉を投げかける。
 だが、そのせいで、わたしの中の獣が咆吼を上げた気がした。
「あああっ! 昌宏のおチンポも、ええよぉ! むっちゃ擦れるぅん! おま●こ、めくれるぅう!」
 いつの間にか、彼に前から抱きしめられる体位に変化していた。
「俺、この体位好き、なんだ、あっ」
「あっ、う、うん! あああたしも、おチンポ、おチンポが奥に届くからぁ! しゅきぃぃ! うあ!」
 思わず、背中を反った。眼鏡がそのせいでズレて鼻眼鏡になる。
 彼はわたしのおっぱいに顔を埋めるようにしながら、乳首を噛んだ。
「るぁん! ちくびちくびぃぃ! はぐふぅ!」
 また、感じた。身も心も堕ちた。
 彼はいやらしい言葉で攻める。
「あ、智子のおま●こが凄いよ! ああ! きもちいっ!」
 わたしは彼に激しく口付けた。
「んんんふぅ! 昌宏と、ああたしぃ、お●こ、お●こしてるぅ! めっちゃ気持ちええお●こぉぉぉ!」
 あかん。口からよだれが垂れる。
 イきそうや。顎が上がって絶叫する。
「ああっ! あかん! あかんてぇ! お、お●こ、イグ!」
 湯船の水音が大きく速くなる。
「お●こイグ、お●こイグ、お●こイグイグぅぅぅ!」
「あ、俺も出る、出る出るっ!」
「あはあああ――ッ!」
 彼は素早くそれを抜くと、水中に出した。
「うううっ!」

 彼の、いまだに熱く硬いペニスがわたしのお腹の上に当たっている。
「あはぁっ! はぁっ……」
 身体が時折、痙攣する。
 彼はキスを求めた。
 わたしは朦朧とした意識でそれに応える。
 それは長く、優しいものだった。
 水面には彼の精液が半分沈むように浮いている。

 彼に寄りかかるように、頭を軽くぶつける。
「どうしようもあらへんわ」
 声に涙が、僅かに滲む。普通の人なら気付かないくらいだ。
 さすがにまぁくんは、わたしの声の調子に敏感だった。彼は慌てる。
「え、なにが? どうしたの」
 頭を起こすと、彼を強く抱きしめた。
「好きで好きで、大好きでどうしようもないんよ。 ホンマ、愛してるんや」
 大阪弁には、愛してる、と言う言葉はない。
 でも、他に言いようがなかった。
 わたしの閉じた瞳から、とめどなく涙が流れる。
「まぁくん……帰らんといてくれへん?」
 無茶な言葉が、わたしの口から飛び出した。それに自分で驚いた。
 何を言ってしまったのだろう。まだ、情交の余韻が残っているせいなのか……。
 彼はわたしの頭を撫でて、笑った。
「うん。でも今は無理だよ。卒業して就職を決めてから、ちゃんと迎えに来る」
 ああ。いつの間に彼は、こんなに逞しい男になったんだろう。
 男の子の成長は本当に早いものなんだな。
 わたしは彼をさらに抱きしめた。

 それから一晩中、わたしたちは愛し合った。
 何もかも忘れられる時間は本当に短かったが、それでも、充分に愛を確かめ合えた。

 次の日。
 JR新大阪駅のプラットホームに、わたしたちは居た。
 彼が優しく、わたしの頬に手を添える。
「じゃあ。また、来るよ」
 それを両手で握る。
「うん。待っとるわ」
 発車のアナウンスが流れる。
「それ以外の事でも、いつでもなんでもええからメールとか、してな」
「ん。解った」
 わたしは、できるだけ微笑みを続けた。
「ほな、な」
「ん。ほな」
 ドアが閉まった。
 手を振る。
 列車がゆっくり進み始める。
 彼は手を振り返す。
 だんだん遠のく彼。
 やがて、見えなくなる。

 もう逢えないわけでもないのに、胸が苦しくて息が詰まる。
 必死で涙を我慢して、駅を出た。

 車のドアを開け、座席に倒れ込んだ。
 自分の嗚咽が車の中を支配した。

 しばらくして。
 なんとか落ち着いた。
 目を閉じていると、街のノイズが聞こえる。
 目を開けると、世界が色あせて見える。
 明日は月曜日。また、仕事だ。
 わたしはこれから独りの暗い部屋に帰って、テレビを相手に夕飯を摂らないといけない。
 彼はいない。

 なんだ、これは。
 これが現実なのか。
 彼がいない場所に意味があるのか。

 何もかも嫌だ。
 彼に逢いたい。
 さっき別れたばかりだというのに。
 待つと決めたのに。

 思考が乱れる。
 また、涙が出そうになる。

 ふと、彼のいた助手席の足元に目が留まった。
 白い小さな紙袋がある。彼の足に隠れて見えなかったのだろう。
 忘れ物かと思って、それを手に取る。
 少し迷って。
 中を見た。
 手紙と小さな箱があった。
 わたしはやっぱり少し迷ったあげく、手紙を読んでしまう。

『智子さんへ
 どうしても箱の中身をプレゼントしたくて、大阪に来ました。
 受け取って下さい。お願いします。 昌宏』

 急いで、箱を開ける。
 そこには、シルバーの指輪があった。
 それをそっと左手の薬指に填めると、さっきまでとは違う種類の涙が溢れてきた。
 わたしは、泣きながらケータイでメールを打った。
『受け取ったわ、アホ』

 約束の印。
 そう。これはまだ、約束だけでしかない。
 しかし、それはわたしをこの場所で生かし続ける力がある。

 わたしは頭を上げて、ケータイをカバンにしまう。
 替わりに車のキーを取り出して、エンジンを掛けた。
「まだまだ、これからやん!」
 そうつぶやいて、アクセルを踏んだ。


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