[智子の告白 7]

パーティング・フレンド


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 ここは“彼の部屋”という名の、涼しく居心地の良い水槽。
 金曜の夜から、土曜日曜と一度も外に出ることなく、そこで彼と泳いだ。
 まるで世界で二匹だけになってしまった魚のように。
 風呂場で、キッチンで、トイレで、そしてベッドで。
 夢を見るように、熱に浮かされるように。
 さざ波のように、津波のように。

「ん……今、何時……」
 わたしは目を開けて、壁に掛かったシンプルな時計を見た。
 夜中の十二時。
 すでに日付は月曜日だ。
「まぁくん。ほな、帰るわ」
 わたしは、疲れ果てベッドにうずくまる彼に軽くキスをして下着に手を伸ばした。

「智姉ぇ……」
 彼が目を覚ます。
「今日、会社休めないの?」
 一瞬、わたしの動きが止まる。だが、すぐブラを着ける作業に戻った。
「無理や。ごめんな」
 出来るだけ冷静に、素っ気なく返答した。
 立ち上がって、椅子に掛けておいたシャツを取る。
 彼が抗議する。
「なんで、なんでそんな簡単に割り切れるんだよ!」
 懐かしい。まるで子供の頃のように彼が拗ねている。

 幼い頃の夏休み。
 いとこの彼はバッタを捕まえて虫かごに飼っていた。
 しかし、子供とはすぐに飽きるもので、彼とわたしはバッタの事などすぐに忘れて遊びほうけていた。
 しばらくして虫かごを見ると、バッタは死んでいた。
『智姉ぇ、これってリセットできないの! ねぇ、智姉ぇ!』
『無理や。ごめんな』
『なんで、なんでそんなに冷たいんだよお……』

 わたしはスカートを穿きながら、あの日と同じ返答をした。
「大人やからな」
 彼がなにかさらに言い出す前に、わたしは続けた。
 そう、今はあの日とは違う。
「でも、あたしは――あの朝比奈さんやっけ? 電話の子に負けへん言うたやろ」
 わたしは彼の目の前に戻ると、真っ直ぐその瞳を見つめた。
「そうやな。一ヶ月。一ヶ月だけ待ってや。どういう事か、教えたげるから」
 彼は、いぶかしげな顔をした。
 わたしは上着を肩に掛けて、玄関に向かった。
「その間、あんたは自分の性欲と、朝比奈さんの攻撃を抑え込んどいてな」
「あ、智姉?!」
「ほなな」
 わたしは玄関を出てドアを閉めた。
 最後の挨拶が涙声だったのは気付かれなかっただろうか。

 廊下に靴音を響かせ、足早に去る。
 冷静に冷静に。
 だが涙が溢れて止まらない。
 眼鏡を少し上げてそれを拭う。
 エレベータのボタンを、かすむ目でなんとか確認して押した。

 彼といたい。
 ずっとこのまま。
 でも、それは無理だ。
 だから、今はしかたない。
 一ヶ月。一ヶ月後にはきっと……。

「智姉!」
 彼の呼び止めようとする声が、背後から聞こえた。
 自室から飛び出したのだろう。
 ちょうどその時、エレベーターが着く。
 わたしはそれに飛び乗った。
 彼の顔を見たら最後、もう大阪に帰れない。
「智姉ぇっ!」
 エレベーターの扉を閉めるボタンを押す。
 彼が扉の前に来たときには、すでにエレベーターは動き出していた。
 わたしは彼に背を向けて、ただ手を振った。

 大丈夫。大丈夫やから。

 その日。ほとんど眠っていない状態で、わたしは出社した。
 なんとか午前の仕事を終え、昼休みになる。
 わたしは、ひとり休憩室へ向かった。

 自販機の冷たい缶コーヒーを手に、椅子に座る。
 ガラスの向こう、目の前に広がるビル群の影が濃い。外はもう夏本番の明るさだ。
 缶をテーブルに置き、眼鏡を上げた。
 瞳を閉じ、目頭を押さえた。
「ふぅ……」
 ひと息つく。

 ふいに、誰かがわたしに話しかけてきた。
「お疲れさん」
 この声は同僚の亜紀だ。
 わたしは目を開けずに、答える。
「ん。めっちゃ疲れた」
 彼女が横に座る音がした。
「ははは。そら、ええこっちゃ」
 彼女が何か缶を開ける音。
 そして、それを飲む音が続く。

 しばし、沈黙。
 亜紀がまず、口を開く。
「ほんで?」
 すかさず、返答。
「なにが?」
「智子。あんた何か決めたこと、あるんちゃうの」
「亜紀には勝てんな。ほんま、なんでもマルッとお見通しや」
 わたしは口元を緩め、眼鏡を下ろした。
「そやな。亜紀の言うとおりや。決めた事がある」
 亜紀のほうを見た。彼女は真剣な目をして聞いている。
 わたしは決意を口にした。
「会社、辞めるわ」
 しばらく亜紀はわたしを見つめ、そして強く目を瞑った。
 やがて、深く息を吐いた。
「そんなお土産、いらんかったわ」
 そう言って目を開けると、寂しそうに笑った。

 退社時間になった。
 残業の数人が残っただけの部署内で、わたしはセクハラ主任――もはや本名を忘れた――に、辞表を提出した。
「はぁ? どういうことや……」
 彼はそれを前に、ぽかんと口を開けた。
「社則では自主退社の場合、一ヶ月前からの辞表提出が義務付けられていますので、それに則って提出したまでです」
 彼が溜息を吐いた。
「おまえ、そんなん通ると思てんのか。会社っちゅーのはな……」
 わたしは冷静に、いや、冷淡に答えた。
「あなたに言われたくありません」
 彼は跳ねるように立ち上がって、大声で脅す。
「なんじゃその口のききかたはぁ! 俺は上司やぞ!」
 だが、わたしのほうがやや背が高いので、迫力はない。
 それよりも彼の息が臭い。
 わたしはハンカチで鼻をおさえた。
「例の件を、亜紀と一緒に人事で暴露しても良いんですよ?」
 彼の顔色が急速に悪くなる。
 彼はいわゆる“援助交際”をやっているのだ。
 亜紀が証拠を掴んでいる。
「く……おまえ、ほんま舐めとるな……」
 彼は疲れたように椅子に座り込む。
 それに追い打ちを掛けるわたし。
「それはあなた自身に原因があると思いますが?」
 彼は涙目で叫んだ。
「うううっさいわ! わかった、とっとと辞めろや! 二度と顔見せんな!」
 残業の人間が、ややざわついた。
 わたしは主任と、彼らに一礼して社を後にした。

 それから、ほぼ一ヶ月。
 その間に、わたしは引っ越しの準備を進めた。
 引っ越し先は、もちろん彼のいるマンションだ。どの部屋でも良い。
 もし部屋が開いていなかったら、近所に借りるつもりだったが運良くすぐ隣が空いていた。
 これは天の采配に違いないと喜んだ。
 わたしの仕事は後輩に引き継いだ。いや、正確には引き継がせた。
 何度も一人では無理だというので、複数人に分担させることにした。

 送別会の日は週末だった。
 主任は来なかった。
 そのせいか、それともお酒のせいか、みんなは口々に主任の悪態を吐いた。
 会がお開きになって、それぞれがわたしに温かい言葉を残して、帰っていった。
 嬉しかった。わたしにも、居場所はあった。ありがとう、みんな。

 わたしは花束を抱えながら、軽い足取りで帰りの駅に向かった。
 するとそこに亜紀がいた。
 わたしは不思議に思って声を掛けた。
「ん? なんで居るん。帰ったんやないの?」
 亜紀がスタスタと近寄ってきて、わたしを見上げた。
 顔が赤い。お酒が回っているのだろうか。
 彼女は息を吸い込み、ゆっくり吐いた。
 何かを決心したようだった。
「あんな、智子。最後やから言うし、これっきりやからな」
 その瞳は真剣そのものだった。
 一体、何を言い出すのだろう。
 わたしは言葉を待った。

 やがて、彼女は告げた。
「あんたんとこ、泊めて」
 わたしは、やや拍子抜けした。
「あ、ああ。別にええよ。でも、ほんまにもう荷物片付いてるから、寝るとこもベッドだけしかないんやけど……」
 彼女の顔の赤みが増した。
「うん。分かってる。せやから、その、一緒に……寝たら、あかんかな?」
 少し震えている。今にも泣きそうな少女のようだ。
 わたしは彼女の言いたい事を理解した。
「そか……そうやったんやな。でも、あたしにはその趣味はない」
 彼女の体が叱られた子供のように一瞬、固まる。
 それを見ながら、わたしは続けた。
「ないけど、亜紀がそうしたいんやったら、ええよ」
 わたしも、少し頬が熱くなる。
「あんたは特別やからな。ウチにおいで」
 彼女に微笑みかけた。
「ありがとぉ!」
 亜紀がわたしに飛びついてくる。
 わたしは彼女の頭を優しく撫でた。

 これは浮気じゃないと自分に言い聞かせた。
 相手は女の子だし、しかも一回だけ、今夜限りなのだから。

「ん、んん……ちゅっ……」
 ほの明るいわたしの部屋に、わたしと彼女のキスの音が吸い込まれる。
 積み上げられた段ボール箱のせいで、音はほとんど響かない。
 わたしたちは、ベッドの上で全裸になり、絡み合っていた。
 わたしが下で、彼女は甘えるように上に乗っている。

 彼女の舌が、わたしの唇を優しく這う。
「んふ……ふ、ふぅ」
 わたしも舌を突き出し、彼女の舌先をつつく。
 彼女がまた、わたしの唇を塞ぐ。
「ん! んちゅ、ちゅぷ……っ」
 ギシ、とベッドが軋んだ。
 わたしの胸と彼女の胸がお互いに重なり、潰れ合う。
 ふわっとした不思議な感覚だ。
 男性にはない、柔らかさと軽さ。
 初めての経験だ。
 鼓動が早くなるのが解った。

「るあー……」
 わたしに覆い被さるようにしていた亜紀が口を開けながら、ゆっくり離れた。
 唾液の銀糸が伸びる。
 その顔には、性的なうずきが表れているのが見て取れた。
 切なそうな、少し怯えるような瞳。
「智子……好きや……ほんまに好きなんよぉ……」
 彼女は男みたいに荒々しく、わたしの右胸を揉んだ。
「んん! 亜紀、強過ぎ……や。はっ」
 彼女は聞かず、もう片方の乳首をねぶる。
「ん……っ! あああっ、あっ」
 彼女は乳首を攻めながら、問いかけてくる。
「らぁ、智子ぉ。先っぽ弱いろん?」
 ちゅぱちゅぱと子供のように吸う。
 もういっぽうの乳首は人差し指と中指で挟まれ、ねじられる。
「んん! はぁっはぁっ……う、ん、弱いん……ふっ」
 彼女の頬に触れ、フローラルの香りがする髪を指に絡め、感じているわたし。
 もうかたほうの手の甲を軽く噛んだ。
「ひぅっん! はぁっ、あかん……て、ち、乳首ばっかりぃ……ん」
 彼女は口を離さず、答えた。
「ふぉうやなぁ、ほな、下のほうもいこか」
 彼女の手が乳房から離れ、わたしのお腹の上を通り過ぎ、陰毛に触れた。
「智子の、あそこ……」
 彼女の声はややうわずっていた。
 その指はさわさわと、その恥骨の辺りを触り続ける。
 わたしはたまらなくなって、つい懇願してしまった。
「あ、亜紀ぃ……早よぅ……」
 亜紀がわたしの目を見て、ちょっと驚く。
「うわぁ……智子、そんなエロい子やったんや……」
 わたしの顔が紅潮するのが解った。
「う、うん。わたし、たぶん亜紀が思てるより……かなり淫乱、いうのかな……そんなんなんよ」
 亜紀の瞳に、冷たい光が宿る。
「へぇ……そうなんや。それって、彼のせいなん……かっ!?」
 彼女はいきなり指を二本、膣内に突っ込んだ。
「ああうっ!」
 わたしは腰を跳ね上げてしまった。
 ぐちゅぐちゅと、中をこねくり回される。
「ああうっ! うあっ、ああ……はっ」
 亜紀が乳首から口を離し、責めるような口調で囁いた。
「えらい濡れとるなぁ……男のこと、思い出したんか? なぁ? なぁて!」
 親指でクリトリスをぐりぐりと押え付けながら、中の指で引っ掻くように擦る。
「うあっ! そ、そんな事、あらへん……うふぅっ! ぬ、濡れやすいんや、ってえ」
 自分でも、中から愛液がどんどん溢れるのが解る。
「はぁっはぁっ……智子が感じてるん見てたら、あたしもすっごい濡れてきとぅ……」
 亜紀の言葉に出身地の神戸弁が混じる。
「なあ、あたしにもしてぇ」
 亜紀がわたしの手をその秘部に導いた。
「ほ、ほんまや……えらい事になってるわ……」
 わたしと同じくらい薄い亜紀の若草の間からは、大量の蜜が溢れていた。
 指先で、つつくように彼女の淫芯を撫でる。
「あ! と、智子、智子ぉ! きもちええよぉ……」
 彼女はその快感を自分の指でわたしに伝える。
「んはっ! そ、その上んとこ、あうぁっ、いいっ! きもちいっ!」
 びくんびくんと、腰が勝手に動く。
「智子があたしの指ですっごい感じとぅ……あっ! あたし、あたしも智子の指、感じとぅ、感じとぅよぉ!」
 わたしたちは、お互いを攻め合いながら、激しくキスを交わす。
「ん、んはっ! んちゅぷ、ちゅぅっ!」
 横に抱き合う形になって、その行為に没頭した。

「あ、あかん、智子、い、イキそ……ふっ!」
 彼女は不意に体を離し、ベッドを降りた。
 わたしもかなり高ぶっていたので、思わず彼女にせがんだ。
「あん! な、なんよぉ、亜紀ぃ……もっとぉ……」
 彼女は持ってきていた自分のバッグを探った。
「はぁっ、はぁっ……ま、まだイくんは嫌なんや……ん、あった」
 バッグから取り出したそれは、革のパンツにペニスを形どったいやらしいものが付いていた。
 俗に言うディルドーだ。
 わたしは少し驚いた。
「そんなん持ってきてたんや」
 亜紀はにこりと笑うと、さらにもう一本取り出す。
 わたしは、さらにびっくりした。
 それらを、どうするつもりなのか。
 亜紀は手慣れた感じで、二本を真ん中で革のパンツを挟むように繋げた。
 Uの字になる。まるでバッファローのツノのようだ。
「これ使ぅて、一緒にイこ?」
 その先端部分をねぶりながら、蠱惑的に笑う。

 亜紀がわたしにまたがった。
「ほな、先にあたしが、ん、挿れ、る、わ……んん!」
 目の前でいやらしい形のものが、彼女の中に挿入される。
 わたしはその非日常の光景から目が離せなかった。
「っは……入った、で。ほら、触って……」
 わたしは体を起こし、初めて見るその張型に、おずおずと触れてみる。
「ん……」
 亜紀が反応した。
 本物より冷たく、表面の抵抗が少ない。つるつる、というよりも、さらさらしている。
 シリコンなのだろう。先端と棒状の部分の材質にも差違がない。
 全体は、やや柔らかい。どこを触っても、全てが同じ硬さだ。
 本物は……彼のおチンポは、外側は柔らかいが内側は硬く、熱い。

 おチンポにするように、シコシコと擦ってみる。
 亜紀は腰を突き出した。
「ん……な、中に伝わっとぅよ、その動き……」
 わたしも、さっきより興奮が大きい。
「ああ、智子が、あ、あたしの、ちんこ、いろうとうぅ……」
 わたしは、だんだん息が荒くなってきた。
 亜紀の腰が、くっくっと動く。
「はぁはぁっ……と、智子、挿れさせてぇ、これ、挿れたいぃ」
「ん、あ、あたしも欲しいわ……」
 わたしは、それを自分のヴァギナにあてがった。
「ん……亜紀、来て……」
 片手で彼女のおチンポを支えながら、寝転がる。
「はぁはぁ、行くで、智子……」
 ぐっ、と彼女と同化したものが中に分け入ってくる。
「んぁっ! ああ……亜紀の、が入ったぁ……」
 それは彼のものとは違う、ひんやりとした感触だった。
 大きさも、やや大きいようだ。
 亜紀が泣き笑いといった表情で、震えた。
「はふぅ……やっと智子と、ひとつ、に、なれた……」
 わたしの胸に顔を埋めて、抱きしめてくる。
「ごめんな……彼氏がおるん知っとぅのに、こんなこと……」
 わたしも彼女を抱き返した。
「そやな。自分でも驚きやわ。でも何回も言うけど、あんたやから許したんやで。亜紀」
 彼女は胸の中で頷いた。
「ありがとぅな……智子」
 わたしは彼女の顔を両手で軽く挟むようにして、その目をみつめた。
「今だけは恋人同士や。一緒にイクんやろ」
 そう言って、彼女の唇にわたしの唇を重ねた。
「ん……」

 柔らかなピンクの唇が離れた。
 彼女は憂いを残しながらも、綺麗に笑った。
「ほな、動くで、智子」
「ん……好きなようにして、ええからな」
 彼女は腕立て伏せのように持ち上げ、腰を突き出した。
「んっ!」
 冷たかったモノはもう、体温と同じくらいになっていた。
 それがわたしの膣壁を掻き出し、また、押し込む。
「ん、ん、んん!」
 彼女の優しい視線がわたしの心を掻き乱す。
「あ、あ、亜紀ぃ……きもちい、いい」
「智子、あたしも、う、ふ、めっちゃええよ」
 彼女は少し腕を曲げ、お互いの乳首が触れ合うようにした。
 緩やかな快感が広がる。
「んはっ! はぅうっ! ち、乳首、いい」
 わたしは彼女の首に腕を回した。
「も、もっと、突いて、ええよぉ、あ、はぅっ」
 彼女はわたしの唇に吸い付く。
「じゅる、ん、ふ、ちゅぷっ……」
 お互いの唾液が、とろけるわたしたちの気持ちを代弁した。
「あ、と、智子、智子ぉ! ああっ、ああっ!」
 彼女の腰の動きが早まる。
「ああっ、あああっ、智子、好き、好きぃぃ」
 その言葉がわたしの脳までも犯す。
「はっ、はぁっ、亜紀、気持いい? なぁ、きもちい、の?」
「うん、ふ、と、智子の、お●こ、きもちいっ! いい!」
 いつもふんわりとしている髪が、今は汗で額に張り付いている。
 わたしの体で、彼女はこんなに乱れて、腰を振っている。
 その事実が、物凄く切なくて愛しくて。
「亜紀っ! 亜紀ぃ!」
 体を起こし、強く彼女を抱きしめた。
 その体勢から、わたしが彼女を押し倒す形になる。
「あ、はぁっはぁっ……ん。智子ぉ、あたしを、犯して……」
 わたしは言われるがままに彼女を突いた。
 その間、何度もその唇に、頬に、乳首にキスを繰り返した。
 彼女は体全体が熱くなる。
「智子、智子、い、イク、イキそ、イク……あ、あ、あっ」
 わたしはその火照った顔に興奮を覚えた。
 この視点が男の視点なんだ。
 急速に下半身が痺れてくる。
「んあっ! 亜紀、あたしも、い、イク、イグ、う、イグぅ……っ」
 彼女はわたしの腰に足を絡ませてくる。
「い、いっしょ、一緒に、ひ、イくの! イク、イク、ひク……ッ」
 激しく腰を打ち付け合う。
「ああ、亜紀! イグ、イグ、イグ、ああ、イグっ!」
「はぁん! イクぅイクぅ、いっくぅ!」
 快感の大きな波が、一気に押し寄せた。
 亜紀の足が腰を締め付ける。
「あっ! ああ――イグぅぁ――ッ!」
「はぁあああああ――くぅ――ん!」
 ガクガクと打ち震えながら、わたしたちは果てた。

「ほんまにええん?」
 引っ越しの当日。
 もうすぐ業者が来る。
 わたしの部屋には、亜紀がいた。
 引っ越しを手伝ってくれるということで来ていた。
 彼女は本当に、あれ以降も普通に友達として付き合ってくれた。
 まるで、あれは夢だったかのように思う。
 でも。
「智子はもう、ここにおる人間やないんやから。でけへんのやったらあたしがやるで?」
 わたしから携帯電話を奪おうとする。
「いや、解った。解ったから。消すから、あんたのアドレス全部」
 彼女は頷いた。
「ほな、あたしも今、消すからな。一緒やで」
 彼女も携帯電話を取り出すと、わたしのアドレスを出した。
「さん、にい、いち! はい」
 わたしたちは、同時にお互いのデータを喪失した。
 亜紀はわたしを見て、爽やかに微笑んだ。
「これでええねん」
 ふいに、まぁくんの拗ねた言葉が脳裏に蘇った。

『なんでそんなに簡単に割り切れるんだよ』

 彼女は、わたしより大人だ。
 涙がこぼれそうになる。
 彼女はわたしの腕を撫でた。
「ずっと好きやから。忘れへんから。な?」
 わたしは頷くしかできなかった。

 呼び鈴が鳴った。
 引っ越し業者が来たのだろう。
 亜紀が元気に玄関へ駆けていく。
「はいはーい!」
 ちょっと振り返って、また輝くように笑った。
「がんばりや!」
 その笑顔をわたしは一生、忘れないと誓った。


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